小坊主物語 目次

燃えるような紅葉、底冷えのする冬、命が騒ぐ夏、そして月光が切り裂く闇。才能という呪縛に囚われ、どん底まで落ちた少年・直介。彼が修行僧「朴念」として過ごした三年間は、失った色を取り戻すための旅でした。

禅寺の厳しい日常に散りばめられた、季節の瞬き。型を破って描いた砂紋、一杯の白湯に宿る真心、見返りを求めない無言の汗。知恵として学ぶのではなく、身体で覚えた「生きる喜び」の断片。成長した彼が振り返り、あの日々の光景に「禅語」という名を冠していく物語。

第一部 橋の下から

第一章 乞食坊主と直介
「神童」の没落。橋の下で出会った、墨よりも深い闇 田舎の商家 …
第二章 流転する光、舞う葉 ~不立文字~
雪の白さと竃の火。言葉を越えて網膜に刻まれる万物の移ろい 「 …
第三章 砂紋の機微(仲秋) ~随処作主~
掃いているのは砂ではない。今、この瞬間の世界を描く 寺には、 …
第四章 背負う重さ(晩秋)~自他不二~
肩に食い込む薪の重みが、なぜか凍えた胸を温めてゆく 二度目の …
第五章 一杯の白湯(初冬) ~喫茶去~
欠けた湯呑みに注がれた、都の菓子より甘い「真心」の味 木枯ら …
第六章 無言の汗(厳冬)~無功徳~
誰に見せるでもない、便所掃除の雑巾が描く「清浄」の輝き 雪が …
第七章 闇を歩く灯(春霞)~法灯明・自灯明~
霧に閉ざされた山道。己を灯火(ともしび)として踏み出す一歩 …
第八章 雨音の正体(梅雨) ~日日是好日~
砂紋を乱す雨さえも庭の一部。世界は最初から美しく描かれていた …
第九章 心の重石(盛夏)~放下著(放下着)~
割れた皿への後悔、絵への執着。重い石を下ろした手に残る感触 …
第十章 絵筆と法衣(三度目の秋)
かつて捨てた「筆」と向き合う、新たな命の門出 日々の労働と季 …

第二部 旅路と禅画

第十一章 不格好な鏡
「お前のヘマは、かつての俺だ」 苛立ちの裏に隠れた愛おしき自 …
第十二章 裏絵の経 ~旅立ちの縁~
「墨絵の静寂が、戦火の記憶を弔う」 刀を捨てた男の祈りと、十 …
第十三章 道連れは泣き虫と古強者
「無鉄砲な衝動が、新たな一歩を突き動かす」 鬼をも凌ぐ護衛た …
第十四章 焚火と刀
「人を殺めぬ刀こそ、この世で一番頼もしい」 焼け跡の地獄と、 …
第十五章 矢作の川下り ~男たちのいない里~
「板子一枚下の地獄で、生きる道理を問い直す」 臆病者の念仏と …
第十六章 供養の真意 ~生者への祈り~
「仏を描かずして、仏の慈悲を写し取る」 筆先に宿る慈悲。言葉 …